Lawyers Guide 2024
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25経験者、他分野の業務から転身した弁護士など、幅広いバックグラウンドを持つ。そうした弁護士を惹きつけるのは、著名ブティック事務所として案件対応レベルの高さはもちろん、各弁護士が主体性を持ちつつ自由なワークスタイルで勤務する環境を整えている点だ。 “互いに嫉妬しない協働システム”は、同事務所の働き方を端的に表したキーワードである。案件を弁護士個人ではなく事務所で受託することで、等しい品質でサービスを提供できるチーム作りを行う。この方式をとることでチーム内に助け合う姿勢が自然に生まれ、結果として個々人の自由度が高まるという。 「時短勤務を行う弁護士は複数いますが、代替性の効く業務を割り振られることはありません。リモートワーク等も活かし、主体性を持って案件に取り組める環境です」と語る川﨑弁護士自身も4児の母であり、元検事・元消費者庁勤務という経歴を持つ。 「“業務時間が限られる人に配慮する”というよりは、いつどんなときでもクライアントの要望に高いレベルで応えるためのチーム制なのです」(川﨑弁護士)。 このチーム制を安定的に維持するため、同事務所は若手の育成にも力を入れる。週1回の所内勉強会で最新法令のキャッチアップを行うほか、積極的に若手弁護士に案件の主任を担当させて経験を積ませる。相談者もハイレベルな独禁法対応は知見の幅と厚みでニーズを満たす 「独禁法分野については、近年インハウスの増加などで、外部弁護士には、より専門的な視点が求められるようになりました」と語るのは安井綾弁護士。 「たとえば、将来の協業に向けて競合他社と意見交換する場合は、その具体的な話題について細かく可否の判断を求められますので、エンジニアと面談し、その技術的な内容まで確認することもあります。業務提携のスキームを検討する際には、“海外弁護士に各国の規制について英語で確認してほしい”というご依頼もあります。独禁法規制は、各国の法令についてある程度の知識がなければ効率的に内容や運用について質問ができません。私は前職の自動車メーカーで欧州の社内弁護士とともに欧州競争法を中心にグローバルな競争法対応を担当していましたので、その際の経験が役立つ場面も多いですね」(安井弁護士)。 安井弁護士によると、いま企業が注視しているのは、①海外のM&Aや業務提携、②国内の優越的地位の濫用規制、③垂直的制限における再販売価格制限の3点だという。 「①は企業結合案件の届出制度に関して、欧州や米国で最近動きがありました。②は国内の取引に関する紛争に近い事案において、交渉材料、攻撃材料となるか否かというご相談が増えています。事案は公表されないものも多いのですが、さまざまな業種や場面で問題となることがあります。③はパナソニックの指定価格制度導入で関心が高まる分野です。“小売店への流通の様態に応じて、独禁法上問題とならないルール作りを支援してほしい”というメーカーからのご相談は多いですね」(安井弁護士)。 安井弁護士は個人情報・データ保護分野や不正調査の業務にも対応する。 「情報法分野については、総務省でデータ保護の実務を経験した弁護士が中心となって取り組んでいます。違反すれば大事に至るので、ご相談は多くあります。データの国外移転に関しては、場合によってはハードルが高いため“域内に留める”との判断をする場合もあり、いかにニーズに応えるか、提案力が試されます。不正調査については独禁法違反に関する社内調査川﨑 由理弁護士Yuri Kawasaki04年慶應義塾大学法学部卒業。08年中央大学法科大学院卒業。09~11年東京地方検察庁検事。11~13年福井地方検察庁検事。15~16年消費者庁表示対策課課長補佐。19年弁護士登録、池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。安井 綾 弁護士Aya Yasui96年上智大学法学部卒業。03年弁護士登録。03~04年Dorsey・&・Whitney・LLP・Tokyo・Office。04~16年シティユーワ法律事務所。10年コロンビア大学ロースクール修了(LL.M.)。17~19年三菱自動車工業株式会社(法務部担当部長)。20年池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。

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