Lawyers Guide 2024
18/156

事業部から見た“法務に求める機能”とはル・解釈が予定していない領域において事業が踏み込める領域を広げ、ルール自体を新たに構築・変更する機能Lawyers Guide 202414を自ら行う過程で、自分の業務であるセキュリティ部門でも、日々の多種多様な問い合わせに対して同じリソースが投下されている現状から、“選択と集中”を考える分かれ目が来ていると感じます。新川氏 当社でも法務は慢性的にハードワークですが、法務に限らず、「生成AIをサポートツールとしてどう活用していけるか」は検討できると思います。テクノロジーの活用により、法務の経営関与の度合いを高め、いっそう事業に貢献していけるといいですね。渡邊弁護士 生成AIは、実務に耐える精度にはまだ“道半ば”かという感触を持っています。一般的なAIガバナンスの世界でも「Human Oversightをどの粒度・範囲で行うか」が問題となりますが、法務の世界でも、生成AIの成果をめぐって大きな論点になるだろうと考えています。一方で、法務の改革を行ううえでは、“トップダウン型”と“ボトムアップ型”の双方からの改革が必要だと考えていますが、いかがでしょうか。岡村氏 同感です。トップダウンは、法務の目指すビジョンを定め、法務人材がビジョンに沿った行動をとった場合に、その行動が評価されるしくみが必要です。一方で、ボトムアップは、法務人材がさまざまな事業にプロアクティブに関わることで現場の取組みを理解でき、法務としての貢献の方法や実感、自身のキャリアを描く機会になるはずです。間宮氏 法務をはじめ専門性の高い部門は、他部門のミッションや業務が見えず、自らの部署のみで答えを出すしかないケースも多いかもしれません。ですが、私自身が法務室から現在の部署に異動して強く感じたのは、「違う知見を持つ部門との連動がいかに重要か」ということでした。法改正も、技術面からの検討・判断はエンジニアの協力がなくては適切なアプローチが難しい局面になっています。躊躇せずに周囲の知見を持ち寄る方が、強固なガバナンス構築につながり、全員にとって幸せだと思います。岡村氏 たとえばプライバシー保護の観点でも、「○○機能が気持ち悪い」など、個人情報保護法は遵守していたものの、提供サービス上の配慮不足が利用者の反感を買い、炎上するケースが世間ではあります。これは、本来、個人の権利や利益を考えてサービス設計すべきところを、“法令の条文遵守”が目的化したために起こった事例のように感じます。最近では、法務機能として“クリエーション※1”と“ナビゲーション※2”が求められていると聞きますが、私は双方の機能を法務単独で担おうと気負う必要はないと思います。事業部門や関連部門と肩を並べて事業についてじっくり話し合い、法務も各部門も判断材料を用意する。そんな世界観がよいのではないでしょうか。渡邊弁護士 おっしゃるとおりですね。“クリエーション”や“ナビゲーション”は法務機能の文脈で出てきた言葉ですが、必ずしも“法務部”がすべてを担う必要はなく、社内の垣根を越えたコミュニケーションを通じて、「そういった機能を社内でどう作っていくか」「外部専門家にどのように入ってもらうか」という全社設計が重要だと思います。そろそろお時間となりました。本日は非法務(現場)視点の忌憚のない意見をうかがうことができ、とても参考になりました。ありがとうございました。※1 クリエーション機能:法令等のルールや解釈が時代とともに変化することを前提に、現行のルールや解釈を分析し、適切に(再)解釈することで、当該ルー※2 ナビゲーション機能:事業と経営に寄り添って、リスクの分析や低減策の提示などを通じて積極的に戦略を提案する機能

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る