Lawyers Guide 2024
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Lawyers Guide 2024Lawyers Guide 2024座談会現役法務部員  濱野敏彦弁護士が語るの利用動向から導入の際の課題、ルール作成の要点までの面覆生成1010リスクを管理しながらいかに利用を促進するか用することには、大きなリスクがあるように思います。情報の正確性などを判断するには経験や専門性が必要になりますので、リスクをルールなどでコントロールすることに加え、そうした�正しい判断ができる人材�の教育も今後は非常に重要になってくると感じています。濱野弁護士 私は、よくセミナーなどでお話ししているのですが、生成AIの中心的な技術はパターン処理を行う�ニューラルネットワーク�であるため、そもそも必ず正しい答えを出すように作られているものではありません。そうした理解を深めてもらう教育なども社内では大切になると思います。また、生成AIから出力されたプログラムについては、「必ずOSS検出ツールによる検証を行う」といったルールを設けている企業も多くあります。導入を進めるにあたり、AさんやBさんがそうしたルール作りなどの点で工夫されたことはありますか。Aさん 当社には約2,000人の社員が在籍していますが、まだ会社で正式な使用を積極的には認めていないことや、そもそも生成AIの導入に漠然とした不安感がある社員も少なくないようで、導入検討を進めている部門以外の多くの部門では生成AIと距離を置いている印象があります。当社の場合は、生成AIを利用するメリットやルールを提示し、積極的に使用してよいことを発信していかないと、生成AIの活用が進まないのではないかと思われるため、まずはルール作りから始めています。とはいえ、ChatGPTと画像生成AIでは留意すべき法的リスクが異なります。そこで法的リスクに広く細かくケアしようとルールを厳しくしすぎてしまうと利用が促進できないので、リスクや注意すべきポイントなどを絞ったうえで、インターネットや生成AIの適切な利活用の啓発になるようなガイドラインに近い形でのルール策定を進めています。同時に、法務部門と情報システム部門、生成AIの活用を研究している部門が連携して専用のメールアドレスのアカウントを開設し、法的リスクから技術的な質問、利活用に関する相談にまで広く回答できる体制、相談窓口を整備しました。濱野弁護士 ChatGPTについて、まずは無料版を使用するケースもありますが、当然、有料版と比較すると、誰でも使える無料版の方が相対的にリスクは大きくなります。たとえば、無料版のChatGPTに社内の機密情報を入力することは情報の漏洩に該当する可能性があると思います。しかしながら、多くの人は、普段からインターネットを使ってGoogleなどでキーワード検索を行っているために、そうしたリスクに対する意識が薄れてしまっている場合もあるように思います。そのため、Aさんの会社が取り組まれているような生成AIを本格導入する前のルール作りはとても大切だと思います。Aさん 法務担当にとって、生成AIの活用への対応を図っていくにあたっては、個人情報等の情報管理から知財、IT・ネットワークビジネスに関する知見、グローバルなビジネスの視点まで、いわば総合格闘技的なスキルを要求されるものだと思います。幅広いスキルを理解していないと対応することが難しい。社内でそうした対応ができるメンバーは圧倒的に少ない状況ですから、すべての社員が「積極的に生成AIを活用したい」と考えるようになれば、先に大まかなルールを最低限作って啓発しておかないとパンクしてしまうと思っています。現状では数十名しか生成AIを活用していないようですが、少しずつでも活用する人が増えるようにしていきたい。そこで当社では、業務で生成AIを使う人にはまずeラーニングと簡単なテストの合格を義務づけることで少しでも事前の啓発を行い、実際の活用においては必要に応じて先程お話ししたような相談窓口に相談してもらうなど、我々とキャッチボールを繰り返し、理解を深めてもらっているところです。濱野弁護士 Bさんの会社ではGitHub コパイロットを既に活用されているとのことでしたが、ルール作りはどのように進められましたか。Bさん 当社の場合はGitHub コパイロットを会社として契約していたので、まずはビジネスプランの範囲で使ってもらうことを前提としました。当初はガイドラインを策定しようと考えたのですが、生成AIの

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