Lawyers Guide 2024
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77リアの充実が得られないように感じます。なお、こうしたポジションに就くにあたってどのような要素が重視されるか、すなわち、企業側としては3年〜5年程度の非法務の現場経験や業界経験、組織におけるリーダーシップスキルを必須とし、内部での育成を重視することや、外部的な知見や高度な倫理性を含む専門性を重視し、法律事務所のパートナークラスを直接招聘することや海外のグローバル企業でのジェネラル・カウンセルやCLO経験を求める考え方などについては、企業や経営トップの考えによって変わってよいと思っています。冨山 “法務組織”という点ではいかがですか。桑形 法務組織のトップが会社全体の方向性をしっかり理解したうえで、それを法務組織の中に落とし込んでいくというしくみが大切です。それから法務人材の育成。これは社内において長期的にじっくり育成していくのが理想ですが、現実には、社内だけでの育成では対応しきれない、外部環境の変化に対応できる能力を持つ人材の活躍も必要ですね。また、法務人材は流動性が激しいので、中途で入ってきた方に対してインクルーシブな環境を整え、その能力を最大限に発揮してもらう必要があります。冨山 確かに日本企業では、得てして過去の経緯などにこだわる傾向がありますが、特にビジネスは非常に速いスピードで動いていますから、新しく来た人の俯瞰した意見を聞くことはとても意味があることですね。桑形 それはサクセション(後継)を考えるうえでも同様で、法務トップがいなくなったら暫定的な代行は立てますが、正式なサクセションはその人とは限りません。その時々の組織課題がまったくないはずはないので、それを踏まえたうえで、単なる業務の承継ではなく“変化を起こせる人”“経営の変革に影響を与えることができる人”でなくてはならないと思います。 それは健全な考え方ですね。高度経済成長か冨山 それは健全な考え方ですね。高度経済成長からバブル崩壊ぐらいまでは、業務運営をしっかりやってらバブル崩壊ぐらいまでは、業務運営をしっかりやっていれば日本の会社は勝ってこられた。もちろん、まったくいれば日本の会社は勝ってこられた。もちろん、まったく知らないのは論外ですが。これは法務の領域も同様で、知らないのは論外ですが。これは法務の領域も同様で、そのビジネスの“本質”を、その時々の潮流に合わせそのビジネスの“本質”を、その時々の潮流に合わせて常に最適な形で世の中に出していく必要がありますかて常に最適な形で世の中に出していく必要がありますから、業務の“ディテール”を知っていることよりも、そのら、業務の“ディテール”を知っていることよりも、そのビジネスの本質的な価値の源泉とその組織が持っていビジネスの本質的な価値の源泉とその組織が持っていNaokuni Kuwagata東京大学法学部卒、デューク大学法学修士(LL.M.)。04年あさひ・狛法律事務所(現・西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)入所。12〜13年英系投資銀行部門に出向、14年インドの会計コンサルタント会社に出向、18〜2019年政府系機関投資銀行部門に出向。19〜21年パナソニック株式会社コンプライアンス部。現在、ノバルティスファーマ株式会社執行役員・日本法務責任者兼法務統括部長。弁護士(日本、ニューヨーク州)。る本性、それから世の中でどんどん変化していく法的な価値観を捉えることが求められます。法律とは常にそのようにできているので、それを理解すると、その応用で個別具体的に起きる現象を把握し、解決方法を導くことができます。こうした感覚は、“多様性”の需要を理解できないと掴めないものです。だからこそ、外部から新しい人材が入ってくることで組織は活性化するのです。桑形 “コーポレートガバナンスの実質化“においても意見の多様性は肝要ですし、それを担保するために役員構成のダイバーシティがセットになってくるのではないかと考えています。また、“多様性”の一例として、たとえば先程もお話にあった性加害や人権の話というのは、権利の侵害を受ける少数派の立場から考えてみないとなかなかピンとこない領域だと思います。そういう意味では、異文化社会に身を置くなど、自身が何らかの“少数派”となる環境で自分の声が届かず困った経験、苦労した経験をした者同士だと本来の問題点を理解した議論がしやすいですね。冨山 まったくおっしゃるとおりです。日本の場合、“日本人”“中年男性・高学歴”という人がずっとマジョリティを占めてきていたので、そうした問題には疎い傾向がある。そういった意味においても、“多様性”は極めて本質的な考え方です。“中途”という多様性、“世代”という多様性、“ジェンダー”という多様性、これらが■うことこそ、企業が生き残るための条件だと思っています。そうすると、当然、サクセションのあり方も変わってくるので、ヒューマンリソースマネジメントの体系から切り替えていく必要が出てきます。桑形 次回はぜひ、人事や内部監査や財務といった視点も含めて議論させていただきたいものです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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