Lawyers Guide 2024
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66Lawyers Guide 2024Lawyers Guide 2024ConversationKazuhiko Toyama東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、03年産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、IGPIを設立。パナソニック ホールディングス社外取締役、メルカリ社外取締役。22年日本取締役協会会長就任。内閣官房「新しい資本主義実現会議」有識者構成員、金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」委員ほか。タルが資金を出す。ところが日本では、こうしたグローバルのエコシステムとはほとんどつながっておらず、会社を作って3年程度でIPOをして数十億程度の資金を集めるというのがほとんどです。もちろんそれが悪いわけではありませんが、産業全体を考えればやはり物足りない。桑形 グローバルとつながっていない理由は何でしょうか。冨山 グローバルレイヤーでは、ルールやプラクティスがほぼ統一されています。意思決定がスムーズにできるようなしくみができあがっているのです。ところが日本の場合、株主間契約では全員が拒否権を持つようなガラパゴス化された投資条件がデファクト化しており、かつ、日本語というイングリッシュ・スピーカーにとって世界で一番難しい言語によって契約書が作成されています。つまり、グローバルベンチャーキャピタルが既存の権利関係について正しいリスク評価を行うためのコストと負担が大きすぎるため、「その気も起きない」というのが実態であるといえるでしょう。こうしたことはベンチャー企業のガバナンスにも影響するため、グローバル標準で見た場合、日本のベンチャー企業のガバナンスが劣っていることになります。そこで、こうした壁を破るために提言をまとめ、モデル英文契約書を作成(2023年7月12日公表)しました。多くのベンチャー企業の皆さんにご活用いただくとともに、日本発のユニコーン企業誕生の一助となることを期待しています。桑形 最後のテーマとして、コーポレートガバナンスの実質化を担う法務像について議論できればと思います。実質化を担う法務像について議論できればと思います。実質化を担う法務像について議論できればと思います。冨山 ジェネラル・カウンセルやCLO(Chief Legal 冨山 ジェネラル・カウンセルやCLO(Chief Legal Offi cer)に関する議論が活発化したのは比較的最近のOffi cer)に関する議論が活発化したのは比較的最近のことですね。そして一部の企業において、しかるべき人ことですね。そして一部の企業において、しかるべき人材がそうした地位に登用され始めました。材がそうした地位に登用され始めました。桑形 日本ではまだジェネラル・カウンセルやCLOの位桑形 日本ではまだジェネラル・カウンセルやCLOの位置づけや役割について必ずしも共通認識がなく、実践置づけや役割について必ずしも共通認識がなく、実践例も乏しいと認識しています。こうしたポジションに就くこ例も乏しいと認識しています。こうしたポジションに就くことをキャリアゴールと設定してもよいのですが、「就いてとをキャリアゴールと設定してもよいのですが、「就いてから何を達成するか」のビジョンがないと、必ずしもキャから何を達成するか」のビジョンがないと、必ずしもキャ多様性を味方につけるい典型的な例に見えます。冨山 日本の経営者の場合、組織に従属しているビジネスパーソンが多いことから、組織の論理に反することは、たとえ倫理的におかしくても遠ざけてしまう傾向にあります。これは日本の組織の重大な欠点です。これを是正していかない限り、同じ不祥事を繰り返すことになります。こうした思いを込めて、先程の緊急声明において「当協会の会長として、当協会の会員はもちろん、世の中の経営者と取締役会に対して、上記の人権コンプライアンス、そして経営者を規律付けるコーポレートガバナンスの体制強化を強く呼びかけたい」と付記させていただきました。桑形 1年目の活動では、グローバル指向のスタートアップにとって重要な、ガバナンス体制、投資契約書などのストラクチャー、ストックオプションなどのインセンティブスキームのグローバル標準化を目指した提言(2023年4月25日公表)をまとめられましたね。冨山 これはグローバルに飛躍する日本発ユニコーン企業がなかなか輩出されない現状において、我が国のベンチャーエコシステムの環境整備を図るための提言として発表したものです。グローバルな階層のベンチャーエコシステムは既に完成されています。たとえば、バイオなどは大量の資金が必要で、20億円〜30億円程度の資金では最後までたどり着けません。ですので、IPOせずに未上場のまま5年、10年と引っ張って、その過程をミドル、レーター、グロースのステージで、何百億円という単位でベンチャーキャピスのステージで、何百億円という単位でベンチャーキャピ企業と経済の成長へ導くコーポレートガバナンスのあり方とは?日本発ユニコーン企業が出現しない理由多様性が組織を守るコーポレートガバナンスを担う法務像

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