取引にも多数関与している小林卓泰弁護士だ。 「そもそも法的に“クレジットとは何か”という点も定まっていません。“動産類似のもの”という意見もあれば、“単なる契約上の地位に過ぎない”という意見もあります。取引の対象であるクレジットが各国の法律の中でどう位置付けられるのか、国が発行しているクレジットと民間が発行しているクレジットでどう区別されるのか、といった点もはっきり分かりません。ただ、現実に取引が制度に先行している以上、我々法律家としても、“走りながら”考えていくしかないといえるでしょう」(小林弁護士)。 法的な性質が明確でないことによって、取引はできても結果的に問題につながる事態は起こりうるという。「例えば、“クレジットに担保が設定できるのか”“譲渡の対抗要件は何か”“差押え・執行はできるのか”“倒産時の取扱いはどうなるのか”などの問題が生じます。法理論上一定の結論が出たとしても、具体的なクレジットの制度自体が担保設定などの取扱いを想定していないこともあるでしょう。“はっきりしないなら参入しない”という判断もビジネスジャッジかと思いますが、現状はそうとは言っていられないでしょう。ならば、法的性質の議論があることを認識した上で、リスクの所在を見極めて取引をすることが重要だと思います」(小林弁護士)。だろうと武川弁護士は指摘する。 「今後、水素・アンモニアを用いた混焼・専焼発電のプロジェクトやCCS・CCUSといった温室効果ガスの人工的な吸収・貯蔵を目標とするプロジェクトなど、商業化の段階に至っていないプロジェクトに広がっていくことも予想されます。新規性のある案件については、国境を越える取引関係やサプライチェーンの構築が求められる場合も少なくなく、現地の法律家との協働が必要です。特にパリ協定の枠組みのもと、日本が積極的に推し進めるJCMにおいては東南アジア諸国のプロジェクトが対象であることも多くあります」(武川弁護士)。 同事務所は東南アジア諸国に多数の拠点を有しており、2023年1月にインドネシアのジャカルタに拠点を新設する。「拠点がある国では、現地法も理解した上で当事務所の弁護士が直接支援しますし、拠点がない国については本分野を知悉する現地事務所と協力の上でサポートします。長年培ってきた現地の法律事務所とのコネクションをフルに活用し、案件ごとに適切なチームを組んでいきたいと思っています」(武川弁護士)。65■所属弁護士等弁護士673名(2022年12月現在)■沿革1971年設立■過去の主要案件▽カーボン・クレジットの売買をはじめとする種々の取引の交渉・契約書等の作成業務▽カーボン・クレジットを巡る各種業規制の調査▽カーボン・クレジットの組成を目的とする国際的なプロジェクトへの法的支援▽その他多数DATA 国をまたぎ多様化するクレジット創出を 現場で支援するサポート体制 カーボン・クレジット制度は他のカーボンニュートラルの取り組みと切っても切れない存在であり、今後クレジット創出のカギとなるプロジェクトは多様化する
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