90年東京大学法学部卒業。90年弁護士登録(第二東京弁護士会)。93年シカゴ大学ロースクール(LL.M.)修了。94年ニューヨーク州弁護士登録。95年東京大学法学部卒業。98年弁護士登録(東京弁護士会)。02年ニューヨーク大学ロースクール(LL.M.)修了。03年ニューヨーク州弁護士登録。96年東京大学農学部卒業。98年弁護士登録(東京弁護士会)。02年カリフォルニア大学デービス校ロースクール(LL.M.)修了。03〜04年三井物産株式会社法務部出向。06年カリフォルニア州弁護士登録。12年シンガポール外国法弁護士登録。22年ベトナム外国弁護士登録。け、その排出枠である余剰排出量や不足排出量を取引する制度)による排出権取引制度を創出する動きがありましたが、導入には至りませんでした。その結果として、現在の日本は炭素効率において世界に後れをとりつつあります」と語るのはカーボン・クレジットに関する各種審議会のメンバーとして約20年前から制度設計に関わってきた武川丈士弁護士だ。武川弁護士は、現在に至っても日本の状況は根本的には変わっていないと語る。 「日本においては、J-VER制度、国内クレジット制度が導入され、これらが発展的に統合されてJ-クレジット制度が創設されるなどの動きはありましたが、法律に基づく削減義務があるわけではなく、ハードローとしてはさほど動きはありません。一方で、変革の胎動は非常に強く感じられる状況です。2023年にはGX(グリーントランスフォーメーション)に向けた経済社会システム全体変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として“GXリーグ”の設立が予定されています。今後どういう形になるかは分かりませんが、ある種のカーボンプライシングが何らかの形で導入される兆しが感じられます」(武川弁護士)。 GXリーグで議論される日本のキャップ・アンド・トレード方式の制度設計は諸外国と比較して特徴的だと語るのは、プロジェクトファイナンスをはじめとする多種多様なファイナンス取引に関与し、留学中にUCバークレーでエネルギー法制を中心に学んだ鮫島裕貴弁護士だ。 「GXリーグにおける排出権取引制度は国や政府がキャップを設定するのではなく、参加企業が独自に温室効果ガスの排出削減目標を設定する形になる予定です。この取り組みは“プレッジ・アンド・レビュー方式”と言われますが、世界的に新規性があり、企業独自の目標設定がどう運用されるかが注目されることになるでしょう。日本政府は2030年までに2013年と比較して二酸化炭素の排出を46%抑える目標を設定しているため、基本的にはそれに整合するような形になるかと思いますが、容易に達成される水準に削減目標が設定されると、クレジットが大量に発行され、市場価格が下がるという現象も予測されます。逆に目標設定が厳しすぎると、達成できる企業が少なく、GXリーグに参加する企業が増えないといったことも予測されます。この点は今後話し合いが行われるところかと思います」(鮫島弁護士)。63佐藤 正謙 弁護士Masanori Sato小林 卓泰 弁護士Takahiro Kobayashi武川 丈士 弁護士Takeshi Mukawa 懸念が残るクレジットの信頼性 現状では検証が難しい問題 国内のカーボン・クレジットに関する制度設計が大きく動こうとする中、関連する課題が山積している。制度的な課題としては企業の排出削減に対するディスインセンティブや相対取引における取引実態や価格決定方法の不透明性などが挙げられる一方、企業の担当者が実務上の問題意識として抱えている一つがクレジットの“質”の問題だという。 「カーボン・クレジットには世界に多種多様な制度があり、大規模なものは国際機関や国が管理していますが、GXリーグのように民間レベルで管理されるものもあり、世界的に制度が乱立しています。ある制度で一定の削減量とされるクレジットを確保することで本当にその分の削減量を確保したといえるのか、その点が信用できない場合にはグリーンウォッシュの問題が発生するのではないかという点は、クライアントのみな
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