てきた高い専門性があるから。一つひとつの法的な課題を断片的に解決するだけでなく、今後のビジネス展開を見据えたアドバイスやご提案ができるのが強みであり、そうした“クライアントの真のニーズに応える”といった姿勢は、当事務所のカルチャーとしてすべての所属弁護士に伝統的に受け継がれています」。そう話す大江耕治弁護士は、近時ヘルスケア企業の新たなチャレンジへのサポートに特に注力しているという。 「厚労省管轄の規制産業でもある医薬品などの領域には、厳しい法規制だけでなく業界団体の細かなルールがあり、特に医薬品のプロモーションについては年々規制が強まっています。例えば、MRの方の自社製品の優位性に関する言葉足らずな説明が他社製品の誹謗中傷として厚労省の指導対象となってしまうなど、少しの理解不足から大きな影響を受けてしまうケースも散見されます。そうした広告規制は今後、医薬品のみならずアプリやウェアラブルデバイスなどの新たに登場する医療機器でも強まるはず。そうしたアプリなどが厚労省の通達に照らし医療機器に該当するかどうかといった論点を含め、最新の規制動向などにも注目しながら、ビジネスに即したアドバイスを行うことが弁護士にも必要になってくると考えています」(大江弁護士)。 ある意味ではルールが未整備な領域へのチャレンジを、“伴走者”としてサポートする。実際、同事務所の弁護士が、新たなビジネスの立案にあたり企業担当者とのブレインストーミングに参加するケースも多く、大江弁護士はバイオベンチャーの新薬開発から資金調達、海外企業との契約交渉にまで携わっている。 「大学で研究に関わる方々も、製薬会社の方々も、根底にあるのは“人の生命や健康を守りたい”という強い想い。そうした方々と力を合わせて新薬の開発に早い段階から関わり、シードの段階からプロジェクトが大きく成長するまでを間近で見ることができるのも、この仕事の大きなやりがいです。私自身も他の弁護士も、そうしたバイオベンチャーやヘルスケア分野の仕事が好きですし、今後も事務所としてこの分野に注力していければと考えています」(大江弁護士)。 近年ではヘルスケア分野のM&Aが増えているが、同事務所にはもちろんそうした分野での知見も蓄積されている。また、市場自体が年々縮小する日本の製薬市場においては、自ずと製薬会社は海外へと目を向けることになる。その点においても、ほとんどの弁護士が海外への留学経験を持ち、世界各都市の法律事務所と仲間として連携できるグローバルなネットワークを持つ同事務所の強みが大いに活かされる。60石川 由佳子 弁護士Yukako Ishikawa06年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所。12年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。14年ロンドン大学ロースクール卒業(LL.M)。ニューヨーク州弁護士登録。乾 正幸弁護士Masayuki Inui13年弁護士登録(第一東京弁護士会)、14年桃尾・松尾・難波法律事務所入所。19年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP(NY)およびMayer Brown LLP(NY)勤務。20年ニューヨーク州弁護士登録。20年桃尾・松尾・難波法律事務所復帰。 コンプライアンス体制の構築を 業界や分野を問わず横断的に支援する また、昨今のヘルスケア分野で大きな注目を集めているのが、医療ビッグデータをはじめとするデータの利活用だ。 「例えば、製薬企業や医療機器メーカーでは、伝統的な規制についての知見はお持ちでも、個人情報保護法などデータまわりの法律であったり、業法以外の部分で課題を持っている企業もあります。さまざまなデータ自体を持っていても、それをどのようなルールでどのように活用できるのかが分からない。このようなケースでは、最終的なビジネスから逆算してどのようなステップを踏めばいいのかといった検討が必要になります。特にヘルスケアの分野で扱われるデータは機微情報が多く、どんどん変化する規制にも対応しなけ
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