行わなければ数億人民元もの過料を科されたり、責任者が個人として責任追及を受けたりする可能性があります。一方で、行き過ぎた対応をとってしまうと多くのコストがかかり、企業にとっては大きな負担となります。このため、“データコンプライアンス体制はどの程度細かいものを構築するのが現実的なのか”という質問が、日系企業から数多く寄せられました。そこで日本業務チームでは、30名以上の専門家を擁する所内のデータコンプライアンスチームと連携し、企業の規模、業務内容、保有するデータの状況等に合わせて、AI等の最新技術も駆使しながら、チェックリストの作成やデータマッピングの実施、社内データ取扱規則の整備、越境移転に係る安全評価申告業務の代理、従業員教育等を実施し、各日系企業にとって最適なコンプライアンス体制の構築をサポートしています」(劉淑珺弁護士)。知的財産権案件を取り扱う専門チームを設置し、日系企業を含む幅広い国・地域の企業に知的財産権に関するリーガルサービスを提供しています。専門チームには長年にわたって北京の裁判所で裁判官として知的財産権案件の審理に携わってきた専門家や、国家知的財産権局での20年近い勤務歴がある専門家、知的財産権訴訟に10年以上携わってきた弁護士等が複数在籍し、特許、商標、著作権、ドメイン名といった知的財産権に関する訴訟やコンサルティング業務に幅広く対応しています」(劉淑珺弁護士)。 「当事務所が取扱った知的財産権案件の中で最も社会的反響を呼んだのが、有名エナジードリンク「レッドブル」の商標をめぐる案件です。当事務所はタイTCPグループの代理人として、同社と中国企業との「レッドブル」をめぐる一連の紛争に対応したのですが、本件は訴額が商標に関する民事事件としては当時(現在でも)最高額の37億人民元にのぼったこともあり、高い関心を集めました。結果として、訴訟では全面的な勝利を収め、「レッドブル」の商標を守ることができました。本件は「中国2020年知的財産権案件Top10」に選出されたほか、最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)の記者会見において“国内事業者と海外事業者を問わず、その合法的権益を平等に保護するという精神が表れている”と言及される等、高く評価されています」(鮑栄振弁護士)。 「中国に進出している日系企業の中にも、特許、商標、著作権等、知的財産権関連の悩みを抱える企業が数多くあります。日本業務チームはそういった企業と知的財産権チームの橋渡しとなり、知的財産権チームと一体となってクライアントが必要とするサービスを的確に提供することで、日系企業の中国における知的財産権管理をサポートしています」(劉淑珺弁護士)。36 高い専門性が求められる知的財産権関連の リーガルサポートも提供 中国では近年、民法典や専利法(特許法)、商標法、不正競争防止法等、知的財産権関連の法令の改正が続々と行われている。また、司法面でも、知的財産権の保護は年々強化されており、2021年には裁判所における知的財産権案件の新受、既済件数がいずれも60万件を突破し、過去最高を記録している。何かと模倣品等の問題が取り沙汰される中国ではあるが、現在では世界的にも知的財産権案件(とりわけ特許案件)の取扱いが最も多く、また審理に要する期間も最も短い国の一つとなっている。 「現代社会では、企業が競争を勝ち抜き、発展を遂げていくためには、何よりイノベーションが必要です。ただし、単にイノベーションを生み出すだけでは、同業者にあっという間に模倣され、優位性を失ってしまいます。だからこそ、特許や商標という形で、知的財産権としてイノベーションを保護する必要があるのです。言い換えれば、知的財産権の管理が、企業の行く末を左右する重要なファクターとなるわけです」(鮑栄振弁護士)。 「知的財産権に関する業務では、弁護士に極めて高い専門性が求められます。知的財産関連の法令や制度の内容を熟知していることはもちろん、各案件で取り扱う知的財産権そのものについても深い理解が必要となるため、さまざまな分野の専門知識を持っていなければなりません。当事務所では、こうした高難度な 日系企業における税関・貿易 コンプライアンス体制の構築を支援 2020年から2022年にかけて、中国では輸出管理法、反外国制裁法等、税関・貿易関連の法令が複数公布、施行された。これらの法令は内容が複雑である上に、違反者に対し厳しいペナルティを設定しているため、日系企業、とりわけ日中間貿易事業を営む日系企業は、その内容を細部まで正確に理解する必要がある。また、税関・貿易分野では昨今、複数の当局が連携して違法行為の摘発にあたることが多く、グルー
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