コーポレートやM&Aを専門とする澤祥雅弁護士は、大手インフラ企業の太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギーに関する複数の案件に対応してきた。また、直近では、国内クライアントに加えて、出向先であったオーストラリアの法律事務所と協働で、海外クライアントを代理して、複数の洋上風力案件にも関与しているという。 「数年前からは地域住民約1,000人が事業者に対してメガソーラーの建設差止めを求める訴訟に、事業者側代理人として関与しています。メガソーラーについてはM&A案件などを通じて技術や規制についてはある程度理解をしていると考えていましたが、差止訴訟に関与したことで、規制内容を実態に即してより深く理解することができ、また、再生可能エネルギーの普及のために地域住民の理解を得ることが極めて大切であることを実感しました」(澤弁護士)。 周辺住民の反対活動によってプロジェクトが中止に至るケースも多々あるという。澤弁護士は、これはメガソーラーに限らず、今後日本で開発が進む洋上風力でも同じ問題が生じるのではないかと考え、特に海外の事業者向けに、洋上風力事業と日本の漁業権に関する記事を英語で発信した。 「中には中止されるべきプロジェクトもあると思いますが、他方で、過度な警戒や不安から過剰な反対運動が行われているのではないかと思われるケースも多数あります。日本で洋上風力発電事業を行うにあたり、漁業関係者は極めて重要なステークホルダーです。海上の風車建設による影響はもちろん事前に調査しますが、実際稼働してみないと分からないこともあります。すると、やはり“生活が脅かされるのでは”“漁業に悪影響があるのでは”と考える漁業関係者は多い。一方で、洋上風力の普及が進んでいるオランダやドイツなどの欧州の国では魚を食べる習慣が日本ほど根付いておらず、漁業関係者の権利も限られています。日本進出予定の事業者にとっては、日本の現状を理解してもらうことが非常に重要だと思い、記事を発信しました」(澤弁護士)。 記事は海外媒体で取り上げられ、数多くの技術者や関係者から問い合わせが入るようになったという。 「日本特有の文化や法規制について説明するほか、海外が先行している再生可能エネルギーの技術や発生した問題を共有してもらうことで、双方が知見を得られる、よい関係が築けていると思います」(澤弁護士)。 洋上風力発電の世界的な普及を推進している非営利団体WFO(World Forum Offshore Wind)の日本代表からも連絡があり、意見交換を重ねた結果、同事務所はWFOに加入することになった。 「WFOにはさまざまな委員会があり、最新の知見を発表したり、セミナーを行ったりしています。欧州の法律事務所も加入しており、当事務所も積極的に議論に参加するとともに得た情報を活かして特に日本における洋上風力事業の発展に貢献していきたいと考えています」(澤弁護士)。33■所属弁護士等弁護士153名、弁理士5名、外国法事務弁護士5名、外国弁護士1名(2022年12月現在)■沿革1981年1月「石川・塚本・宮﨑法律事務所」を設立。1983年1月名称を「大江橋法律事務所」に変更。1995年7月上海事務所開設。2002年8月「弁護士法人大江橋法律事務所」設立。2002年9月東京事務所開設。2015年9月名古屋事務所開設■所属弁護士等による主な著書・論文(共著含む)『共同研究開発契約の法務〔第2版〕』(重冨貴光、酒匂景範、古庄俊哉、中央経済社、2022)、『BtoC Eコマース実務対応』(古川昌平、上原拓也、小林直弥、商事法務、2022)、『優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析〔第4版〕』(長澤哲也、商事法務、2021)DATA澤 祥雅 弁護士Yoshimasa Sawa09年大阪大学法学部卒業。11年京都大学法科大学院修了、弁護士登録(大阪弁護士会)。13年大江橋法律事務所入所。19年Duke University Law school修了(LL.M.)。19〜20年Ashurst Australia(Melbourne office)勤務。21年ニューヨーク州弁護士登録。 専門分野に限らない広い知見で 再生可能エネルギー分野の論点の把握を
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