Lawyers Guide 2023
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の理解を深めてリーガルアドバイスの質の向上に努めていくことも肝要だという。 「例えば、洋上風力であれば、海中に風車を建てるため、周辺環境に対する影響への目配りは必要でしょう。タービン、基礎、ケーブル等のさまざまな産業分野から構成されているため、完工前はタスク間のインターフェイス管理が重要となるでしょう。日本で実績の乏しい技術で建設する場合は、運転開始後1、2年ほどは初期不良対応等が必要になります。金融分野では、事業期間中のスポンサー変更は一定期間制限されていますが、一般的には運転開始後1、2年経つと事業が安定するためエクイティの譲渡が認められはじめます」(村上弁護士)。 ICC、SIAC、JCAA等の主要な国際仲裁機関におけるさまざまな仲裁案件でクライアントを代理してきた細川慈子弁護士は、関係者が多く巨額の資金が動き、プロジェクトが長期間に渡るがゆえに、紛争が多く発生しやすいエネルギー分野の紛争解決に側面から関与している。 「当事務所は伝統的に渉外案件を多数扱ってきた歴史があり、国際仲裁にも数多く携わっています。国際仲裁は、ニューヨーク条約により世界的な仲裁判断の執行の枠組みが担保されており、国際紛争の解決には欠かせない手段となっています。これまで建設・エンジニアリング・機械、技術ライセンス、国際取引、保険、製薬、ソフトウェアなどさまざまな産業・法分野の国際仲裁の案件を担当してきましたが、近年関与したものには、新型コロナウイルスによる渡航制限の影響で生じた紛争、ロシアのウクライナ侵攻により生じた紛争などがあり、変化の激しい国際情勢の下で国際仲裁による解決の重要性を改めて感じています」(細川弁護士)。 エネルギー分野は、想定されるものだけでも設備建設に関する建築紛争や行政・近隣住民との紛争、プロジェクトに関するジョイントベンチャー内の紛争、設備の事故発生時の責任負担に関する紛争など、さまざまな種類で多様な当事者が絡む紛争が想定できるという。 「既にメガソーラー建設に関連した紛争に関与しましたが、今後もエネルギー分野の紛争案件が増加することを見込んでいます。紛争分野ごとに非常に深い専門性を求められるため、所内の各専門家とチームを組み、多岐にわたる分野や業界の知見を深めています」(細川弁護士)。 また、エネルギー関連の分野で国際的に注目されている紛争解決の手法として、投資仲裁があるという。 「投資仲裁は、国家間の投資協定等の条約を根拠に、企業等の投資家と投資先の国の間の投資に関する紛争を解決するものです。既に海外では、外国政府による再生可能エネルギー分野の法制度の見直しをめぐり投資家から多数の投資仲裁が申し立てられています。日本で投資仲裁の経験を持つ企業はまだ一握りですが、出向先のドイツでは多く活用されており、私も出向中に実際に投資仲裁の案件を通じて知見を深めてきました。日本企業にとっても、海外でのエネルギー関連の投資について投資仲裁という手段があることを広めていきたいと考えています」(細川弁護士)。32村上 智裕弁護士Tomohiro Murakami92年中央大学法学部卒業。98年弁護士登録(第一東京弁護士会)、国内法律事務所入所。03年Boston University School of Law修了(LL.M.)。04年Blake Dawson(現Ashurst Australia)(Sydney office)勤務。05年ニューヨーク州弁護士登録、London School of Economics and Political Science(MSc)修了、西村あさひ法律事務所入所。16年大江橋法律事務所入所。 紛争が起きやすいエネルギー分野で 国際的な知見を活かした解決を細川 慈子 弁護士Aiko Hosokawa08年東京大学法学部卒業。10年東京大学法科大学院修了。11年弁護士登録(第一東京弁護士会)。12年大江橋法律事務所入所。17年University of California, Berkeley, School of Law修了(LL.M.)、International Academy for Arbitration Law, Paris(Certificate)。17〜18年Gleiss Lutz(Stuttgart Office)勤務。

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