Japan Lawyers Guide 2022
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DATA■主な所属弁護士会第二東京弁護士会■所属弁護士等弁護士40名(2021年12月現在)■沿革1995年、東京地検特捜部検事等を歴任した矢田次男弁護士が中心となり設立した総合法律事務所。2018年にロサンゼルスオフィスを開設 同事務所では、事案に応じてチームを編成し、早期に全容を解明する態勢をとる。会計不正など、場合によっては公認会計士など他の専門職と強固なチームが編成される。 「“人証(証言)”とともに“物証”をいかに押さえるかが重要です」と結城弁護士は強調する。調査の現場ではメールをはじめ電子データを中心に検証すべき証拠の量は増大するばかりだ。近年さらに発達を続けるフォレンジック技術も活用し、これらをいかに短時間でさばき、分析をやりきるかが対応の成否を分ける。 事案にはどのようにアプローチするのか。「予断を持たないよう留意しつつまず仮説を立て、それを証明するためにどのくらいの範囲まで、どれだけの深度で調査を行うかを決めていきます」と大東弁護士。次に当事者・関係者のヒアリングを行う。「ヒアリングはとても重要です。証人尋問で培ったノウハウも大切ですが、特に時間が極めて限られる会計不正調査のような場合、尋問とは異なりほとんど準備時間なく瞬発力で事案に切り込んでいく弁護士のスキルも必要とされます」(結城弁護士)。 そのとき、キーとなるものは何か。「“会社”をいかに理解するか、すなわちクライアントの組織を理解することですね」と大東弁護士は指摘する。「社内で誰が、どのくらいの力を握っているのか、特に会計不正では、現場と経理などバックオフィスとの力関係はどうか。組織図には載っていない情報が、ヒアリングの成否を分けることがあります」。佐藤文行弁護士も「実際の情報の流れを確認することも重要です。担当者から課長を飛び越して部長に直接情報が流れている場合も多く、組織図からは見えない情報共有のスタイルを確認することで、正確な事実関係の把握が可能となります」と指摘する。るので公表は控えることになる。 どれだけの情報を公表すべきかも、特に海外が関連する事案では専門的見地からの判断が必要となる。小林敬正弁護士は、「米国での捜査や訴訟も想定される事案では、弁護士とクライアントの通信についての秘匿特権を意識した調査・公表が必要となります」と注意点を指摘した。 一方で、不正調査は、不祥事に対する危機対応という位置付けを超えて、企業のあり方を見つめ直す好機でもあると佐藤弁護士は言う。「私たちは調査の際、組織のよい点や活かすべき点も把握することに努めます。それが、再発防止策を通り一遍のものではない実効的なものにするキーだと思うのです」。吉田元樹弁護士がこう続ける。「その企業がうたっているガバナンスや内部統制のあり方と現実の姿との違いを分析し、なぜそのような違いが生じてしまっているのかを外部の目で検証するのが我々の役割だと思います」。「若手アソシエイトも、メールや資料を徹底的に分析する際に、その企業の特色は何かを意識しています」(白水裕基弁護士)。  「内部通報やその制度について、企業はまだネガティブに捉えがちです。しかし、本来それは、企業の自浄作用を強める仕組みの整備なのです」と福塚侑也弁護士は指摘する。「人が定期的に健康診断を受けるのと同じで、コンプライアンスを実現するには不祥事の予防のみならず早期発見も大切です。内部通報の軽視は、結局、企業の病を重篤にすることにつながります」と大東弁護士。「責任追及、処分や法的責任にとどまらない分析、文化も含めて、“会社は続いていくもの”という発想が必要です。よりよい会社の未来を作っていく機会と捉えていただき、それを我々もサポートしたいと考えています」。結城弁護士はこう締めくくった。 組織の再生まで見据えた調査 そしてケアを 調査結果と再発防止策がまとまった後どう対応すべきか。これも企業の浮沈を分ける重要な局面だ。会計不正や消費者被害の拡大など社外に被害が及ぶ場合には迅速な公表をすべきだが、案件によって対応は変わってくる、と大東弁護士は指摘する。カルテル・談合を公取委に報告しリニエンシー申請となれば守秘義務が生じ

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