Japan Lawyers Guide 2022
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を活かした育成方針で多くの優秀な弁護士を育ててきた。 「当事務所では全員がゼネラリストとしての仕事をこなしながら、個々に興味のある分野の専門性を高めています。また、若手時代から、依頼者との面談・交信や、尋問を含む法廷活動に直接関与し、弁護士としての“現場”を経験することにより、単なる法律論にとどまらず、知恵を振り絞って目の前の問題点を解決し、依頼者のニーズを満たすという姿勢が、すべての弁護士に根付いています。新たなテクノロジーに関する法務においても、そうした弁護士としての足腰の強さは大いに活かされていると思います」(内藤弁護士)。 また、テクノロジーの発展でビジネスがよりボーダレスになっている近年では、多くの事業が国内に限定されず、海外の取引先との契約や海外規制の検討をスピーディに行うことも重要だ。コロナ禍で海外との往来が制限されている昨今では、なおさらweb会議等を活用して、海外の弁護士事務所とタイムリーに連携を取る必要がある。同事務所は世界で150都市を超える、約80の独立したローファーム、7,000名の弁護士が参加する国際的なネットワークであるINTERLAWに日本で唯一加盟。海外メンバーファームのネットワークを駆使し、あらゆる国や地域でのプラクティスに、適切かつ迅速に対応できる体制を整えている。年には塩川真紀弁護士が、留学先のロンドンから帰国して復帰。塩川弁護士はロンドンの大学で学んだ後、企業法務やM&Aに強い現地法律事務所で執務経験を積んだ。「高度なテクノロジーを有する企業同士のM&Aによる知財の集約、重要データの独占などについては、現地の規制当局もより厳しく見るようになっています。英国ではコロナ禍でM&Aの数が大きく減ってしまいましたが、日本企業は内部留保が多く、むしろ新たな投資先を探す企業が増えている印象です。とはいえ、例えば投資先の技術を活用して共同開発を行う場合、そこで新たに創出された知財を商品化する際の権利関係や利益の配分まで、きちんと見据えた契約が結べておらず、後々トラブルになるケースも見られます。また、思っていたほどの利益が上がらなかった場合など、うまくいかなかったケースでどのようにイグジットするかを考えた上で契約書を作成することも大切です」(塩川弁護士)。 特に最近では、新しいテクノロジーの分野への投資の機会を探る日本企業が増えている。そうした場面でより重要になるのが、それぞれの技術やビジネスの特殊性を踏まえたデューデリジェンスだ。 「テック企業を買収する際のデューデリジェンスでは、AIやクラウド、仮想通貨など、関連する先端技術について理解することはもちろん、買収対象企業がライセンス契約を受けている場合なら、そのライセンス契約が買収後もきちんと継続するかどうかなど、事前にしっかりチェックしておかなければなりません。さらには知財と同様にコアな技術や人材への関心もより高まっており、そうした技術や人材を適切に引き継ぐことを意識したデューデリジェンスや契約交内藤 順也弁護士Junya Naito89年東京大学法学部卒業。91年弁護士登録(第一東京弁護士会)。95年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、Weil,Gotshal &Manges (ニューヨーク)勤務、96年ニューヨーク州弁護士登録。司法研修所教官(民事弁護)、司法試験および同予備試験考査委員(商法)、東京地方裁判所委員会委員のほか、現在は、筑波大学ロースクール非常勤講師(商法)、第一東京弁護士会の民事訴訟問題等特別委員会委員長、国際仲裁に関する委員会委員長等を務める。 テック分野におけるM&Aの成否を握る 特殊性を踏まえたデューデリジェンス 同事務所には手厚い留学支援制度があり、ほとんどの弁護士が海外留学経験を有している。2020杉本 亘雄弁護士Nobuo Sugimoto02年東京大学法学部卒業。05年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所。09年ワシントン大学ロースクール卒業(LL.M.)、Dewey & LeBoeuf,LLP(ニューヨーク)勤務。10年ニューヨーク州弁護士登録。15年桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー就任。

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