Japan Lawyers Guide 2022
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深圳事務所外観つきを与えてしまう懸念から、仮に当事者企業が自主的に事業者結合の申告を行ったとしても、すべて受理しないという方針をとっていました。しかし、2020年後半からの規制強化の流れを受け、現在の主管当局である市場監督管理総局が、VIEスキームに係るいくつかの案件を処罰しました。結果、中国のIT企業がこぞって自主的にコンプライアンスの点検を行い、過去に遡って未申告案件の報告を行うという動きが加速しているのです」(劉淑珺弁護士)。 中国に進出する日本企業や在中日系企業の中には、こうした動向がIT分野に限ったものと見る向きも多い。しかし、「現在の実際の実務を見ていると、IT企業やVIEスキームに係るもの以外でも、未申告などの違法な事業者結合の問題については、当局が厳しく法執行を行う状況になっています」と劉劉淑珺弁護士は指摘する。 「過去に中国で事業者結合を行ったすべての日本企業が摘発の対象となりえる上、審議が進んでいる改正独禁法では、課徴金の上限が従来の50万人民元から、事業者の前年度売上の1〜10%にまで大きく引き上げられることも予想されます。また、競争相手や消費者、従業員やディーラーなどからの通報も以前より頻繁に発生しており、特に再販売価格の拘束のような問題では、当局は告発を受けると市場競争に影響があるかどうかといった問題を精査することなく、原則としてただちに当該企業を処罰します。つまり、独禁法コンプライアンスの確保は中国でビジネスを行うすべての企業にとって急務となっており、我々のチームではそうしたコンプライアンス体制の構築から新規取引における事業者結合申告、歴史的な未申告案件の補充申告や、独占協定や市場支配的地位の濫用行為などに関する政府調査や訴訟への対応まで、多くの日系企業のサポートを行っています」(劉淑珺弁護士)。 データ三法への対応を強力に支援 一方、2017年に施行された従来のサイバーセキュリティ法に加え、2021年にはデータセキュリティ法と個人情報保護法が施行されるなど、中国ではインターネットやデータ関連の規制も、ますますその厳しさを増している。 「グローバルに事業を展開する日本企業ではほぼすべて、世界で最も厳しい個人情報保護法であるGDPR(EU一般データ保護規則)に対応する体制が整備されています。中国の新しいインターネット・データ規制に対応するためには、そうしたGDPRに対する成果などを活用しつつ、中国の現地法に合わせたローカライズのための現体制のレビューや、新たなコンプライアンス体制の構築や推進作業が必要になります。そこで日本業務チームでは、30名以上の専門家を擁する所内のデータコンプライアンスチームと連携し、チェックリストやデータマッピングの実施や、社内データ取扱規則の整備、従業員教育などを実施。日本企業を含む外資系企業の多くが懸念するデータの越境移転の問題など、サイバーセキュリティ法とデータセキュリティ法、個人情報保護法のデータ三法に対応した日系企業のデータコンプライアンス体制構築を、AIなどの最新技術も駆使しながらクリティカルに行っています」(鮑弁護士)。 さらに2020年9月には、中国政府が“2030年までに二酸化炭素排出量を減少させ、2060年にはカーボンニュートラルを実現する”といった方針を発表し、中国ではクリーンエネルギー関連の投資が活発化。そうした投資案件や、増加傾向にある対日投資案件など多くで同事務所の弁護士がコーディネーター役を務める上、コロナ禍で増える日系企業の紛争事案では、所内の紛争専門チームと共に、より日本企業のカルチャーを知る劉

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