EY弁護士法人代表・マネージングパートナー。99年弁護士登録(第一東京弁護士会)。17年The Legal 500にて日本のコーポレート・M&A第一人者(Leading Individual)評価。EY弁護士法人シニアカウンセル。85年弁護士登録(第二東京弁護士会)。国際金融機関の日本におけるジェネラルカウンセルおよび日本組織内弁護士協会理事長等を務めたのちEYに参画。EY弁護士法人アソシエイト・パートナー。01年イングランドおよびウェールズ弁護士登録。20年外国法事務弁護士登録(第二東京弁護士会)。法務機能コンサルティングを行い、Legal Managed Serviceの普及に尽力。さに長年にわたって体験してきた私やブロック外国法事務弁護士は、よく知っています。電話やメールを通じた手作業で海外子会社の情報を取得するプロセスよりも、その情報が適切・迅速な形でレポーティングされ、本社のダッシュボードで一元管理される仕組みの方が望ましいことには誰も異を唱えないでしょう。上場企業に連結財務諸表の作成が義務化されている財務分野と比較してみても、日本における法務分野のグループ管理はとても遅れています。諸外国で機能するに至った事例については、よいアイデアであれば積極的に取り入れていただきたいと考えています」(室伏弁護士)。伴うリスクの管理には十分注意を払う必要があると語る。「社外からのリモートアクセスを可能にすることは、新たなリスク領域を生みます。今後、感染症対策や働き方の多様化の観点から、リモートワークは常態化していくでしょう。その状況下で適切なリスク管理を行い、かつ生産性を高めるためには、法務部が経営者や他部署と緊密に対話をしながら新しい統制環境とプロセスを作るしかありません」(ブロック外国法事務弁護士)。 一方で、法務部の機能が限定的であることが多い日本企業では法務部が経営者と対話し、大きな変革を起こしにくい環境にあると室伏弁護士は指摘する。「リーガルテックは“きっかけ”の一つです。こうした変革を機に、法務部が関与したからこそ紛争やトラブルを回避できた事例、余計なリスクを取らずにビジネスが進化・拡大した事例など経営側に伝え、両者が共有する成功体験を積み重ねていくべきでしょう。企業価値の保護と向上の両面において法務機能は重要であり、したがって法務部門に十分な予算を割かねばならないという判断を経営陣にしていただくことが重要です。あらゆる企業のバリューチェーンやサプライチェーンが海外に拡大している現在、“これまで大丈夫だったから今後も大丈夫”という保証はまったくありません。法務部の強化あってこそのビジネスの成功だという経営陣の認識が会社全体の発展のために不可欠なのです」(室伏弁護士)。 室伏弁護士はビジネスと法務の関係について、企業内弁護士の増加や、経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」、リーガルリスクマネジメントに関する国際規格であるISO31022の発行など、後押しとなる社会環境が十分あ木内 潤三郎 弁護士Junzaburo Kiuchi コロナを契機とした変化で 日本の法務は強化できるか 新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、昨年はペーパーレスや捺印の省略に脚光が当たり、契約書の電子化や電子署名の導入に関心が高まった。しかし、これらのツールの実装において検討すべき課題は複数の部署にわたり、「ITベンダーだけでは包括的なソリューションは得られず、法律事務所に相談しても局所的なアドバイスにとどまり、せっかくのツールも“ポイントソリューション”に終わってしまいがち」と木内弁護士は指摘する。 同事務所では、EYの他の部門との協働により、ITツールの導入・実装に伴う内部統制やリスク管理などのオペレーションの知見を提供しているため、2021年は社内の契約書管理などを構築するプロジェクトマネジメントについての相談を受けることが多かったそうだ。 ブロック外国法事務弁護士は、リモートワークの活用は競争力強化のために不可欠である一方で、それに室伏 康志 弁護士Yasushi Murofushiマイケル・ブロック 外国法事務弁護士Michael Brock
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