Japan Lawyers Guide 2022
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令にのみ則り活動する弁護士とは一線を画しています。ワールドカップ等のメジャーな大会は2〜4年ごとに開催されますが、その収益は世界全体のスポーツイベントの9割を占め、次回開催までのスポーツ界の基盤となる大変重要なものです。大会ホスト国が運営組織と締結する契約には、競技会場の設営から関連施設やグッズの手配・販売まで数百ページに及ぶ契約が並び、スポーツの種類によって内容も異なります。例えば、前記の2大会において、A&Sでは開催の数年前から大会成功までのプログラムを策定。採択されたモデルは、他の国内外の競技大会にも多く用いられています」(イアン・S・スコット外国法事務弁護士)。 多くのアクターと資金が環流する“祭典”を、縁の下から支える精鋭部隊。スポーツ法部門きっての専門家として、またスポーツをこよなく愛する者として、スポーツ界の法的秩序と発展を願うスコット外国法事務弁護士の熱意が肌で伝わってくる。「スポンサーと選手や運営クラブ等との厳格な契約関係も不可欠です。アンブッシュ・マーケティングや競合スポンサーとの契約規制といった予防的な観点に加え、関係法令に従いながらスポンサーのブランド価値を高めていく商業的な要素の両方について、スポンサーや所属選手の理解を助けていくことが重要と考えています」(スコット外国法事務弁護士)。 地理面・経済面で密接な韓国との商取引にかかるリーガル・サービスもA&Sのダイバーシティを象徴するセクターだ。「韓国プラクティスグループは日本の弁護士6名、外国弁護士等数名の10名前後で構成され、韓国の大手企業や有力弁護士事務所で長い勤務経験がある両言語対応の韓国弁護士を揃え、韓国企業の文化を熟知した上での深いアドバイスが提供できます。現状、両国企業の一般商取引に始まり、ECサイト運営事業者のコンプライアンス体制整備や韓国Private Equityおよび韓国企業の日本でのM&A案件などを受任しています」(ソン・ヨンソプ大韓民国弁護士)。 「韓国出身の外国法事務弁護士は日本でも数える程しかおらず、実務チームとして機能するA&Sのグループは国内屈指のものです。私自身は日韓市場のマーケティング計画の策定や方法の指導を主業務としています。また、外国人弁護士として、クロスボーダー案件に共通する問題に対して手広く対応できると自負しています」(バニー・L・ディクソン外国法事務弁護士)。 海を隔てた隣国でありながら、進出に二の足を踏む状況を想定して、ソン大韓民国弁護士は、クリアな取引契約の締結のほかに日本企業が注意すべき実務上のポイントを丁寧に解説する。「1点目は裁判管轄と準拠法の選択ですが、これは契約締結までの交渉力次第で有利な合意に導くことが十分可能です。次に、商品の輸出入にかかる事前の監督官庁からの確実な許認可取得と輸出先国の法律の遵守であり、大いに傾注せねばなりません。3点目は、契約の履行状況や相手方の信用状況を締結後も常時把握すること。以前、ジョイントベンチャーの相手方(韓国企業)の大株主や投資対象企業の代表が会社資産を横領して問題化したケースを経験していますので、この場を借りて注意喚起したいと思います」。 今日、韓国の伝統財閥で顕著であったオーナーによる経営支配の問題(例えば、内部取引による私益の騙取、持株会社制度の濫用、公益法人による支配力の拡大など) は、規制立法の成立やアクティビスト株主の台頭を背景に徐々に解消に向かっており、両国の企業を取り巻く事業環境にも一体感が醸成されてきた。「日韓ビジネスは政治的な対立をよそに現在も大変活発であり、商機はふんだんにあります。また、いずれもドイツ大陸法を基礎として法の構成・規定がよく似ていますし、日本企業の法務担当者の几帳面さやリスク分析の緻密さにも感心しています。各企業が臆することなく日韓市山島 達夫 パートナー弁護士Tatsuo Yamashimaソン・ヨンソプ 大韓民国弁護士Youngseop Songバニー・L.ディクソン 外国法事務弁護士Bonnie L. Dixon(アメリカ合衆国・ニューヨーク州法)

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