Japan Lawyers Guide 2022
15/133

(オーストラリア・クインズランド州法)フィスを設立してさらなる顧客満足を達成することが目的であり、決して“新天地に挑戦する”というスタンスではありません。また、他事務所の多くは海外拠点の代表パートナーが日本人であるのに対し、A&Sは現地の外国人弁護士が務めています。これにより、現地の言語と事情に精通した弁護士による現地企業との強固なコネクションを武器としたサービス提供を可能としています」。 A&Sにとって、“ダイバーシティ”とは外発的な達成目標などではなく、黎明期からDNAとして備わった先天的気質のあらわれに過ぎない。 「一昔前は、“企業法務の弁護士”というと学歴や性別に大きな偏りがあったものですが、A&Sは歴史的に弁護士の出身(国籍)や来歴も含めバラバラであり、実際に、大手重工メーカーや製薬企業をはじめとするインハウス(社内)弁護士経験のある者のキャリア採用実績や外国人・女性弁護士の比率は、競合の法律事務所を大きく上回っています。かかる多様性を前提としてコミュニケーションを円滑に進める文化が定着し、各々のキャリア・ステップと価値観を尊重しながら専門性を高める相乗効果をも生み出しています。また、税理士や監査法人など所外の専門家とも能動的にチームを組み、A&S内で完結させることにこだわらない真のワンストップ対応を実現しています」(根津弁護士)。得手があればサービスの品質に差が生じるおそれがあります。対して複数のネットワークを並行して積極活用するA&Sは、費用・スピード・品質のすべての面で顧客企業のニーズに即応した柔軟なアレンジができ、クロスボーダー案件に好影響を与えていると考えます」(山島達夫弁護士)。 とりわけ、モノ・ヒトの移動面の制約が継続するポスト・コロナ下にあって、海外子会社をも包摂する企業集団としてのガバナンス強化が競争力保持の要となる日本企業。山島弁護士は、“A&S包囲網”の果たせる役割を簡潔に整理する。「第一に、海外子会社が自社の顧問弁護士にのみ依存する事態を避け、問題に応じて得意な現地弁護士をピンポイントで紹介・起用することができます。第二に、日本の親会社でハンドリングが難しい海外子会社の問題を、我々がハブとなり、現地の担当社員および弁護士事務所とコンタクトをとって解決に導きます。最後に、事業管理(プロマネ)の視点から、親・子会社の双方の意向を踏まえた上で理想のガバナンス対応を行えます」。根津 宏行 パートナー弁護士Hiroyuki Nezu 法域をまたいだ世界的なネットワークで クロスボーダー案件を機動的に支援 A&Sの機動力は、所内の人材の豊かさにとどまらず、法域をまたいだ世界的ネットワークにより、二次的に強化されている。「法分野や地域に応じ、実績と定評のある国際的なリーガル・ネットワークに複数加盟しています。米英のグローバル・ローファームのように、世界各国に自前で支店を出すスタイルもワンストップ・サービスを提供する点では有利な反面、特定の分野に得手・不野崎 竜一 パートナー弁護士Ryuichi Nozakiイアン・S.スコット 外国法事務弁護士Ian S. Scott スポーツ法と韓国プラクティス 重厚な布陣で産業界の ダイバーシティを加速 A&Sのダイバーシティが大いに発揮された最近の実績としては、スポーツ法分野が最も分かりやすい。 「A&Sのスポーツ法部門は、国際的な大規模スポーツイベントにおいて専門的かつ網羅的な管理・運営実務を担っており、東京五輪2020やラグビー・ワールドカップ2019では運営組織のリーガル・カウンセルに選ばれました。私も委員を務めるスポーツ仲裁裁判所(CAS)や、世界ドーピング防止機構(WADA)など、主要スポーツを管轄する最大級の国際組織の活動にも参画し、これは、単に選手個人の権利保護のため各国の法

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る